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「お前も…あいつら、あちこちで監視してるから気を付けろよ」
「……え?」
今日の練習が終わった帰り際。
斎藤くんがそう言って教室を出て行った。何のことか聞こうとしたのに、もうその場には居なくて。
「今日のご飯は何にする?」
「んー。和食とかどう…?最近、魚食べてないし」
「じゃあそれで」
奏に話し掛けられたし、まあ気にする事でもないか…って、いつも通り奏と2人でスーパーに出掛けた。
魚と、お味噌汁の材料と…茶碗蒸しも作ろうか。
適当な材料を買って、寮で支度。作ったご飯を奏にベタ褒めされるのも、もう慣れてきた。
「奏はセリフ覚えた?」
「だいたいは。普段口にするようなセリフばっかだし、覚えやすいから」
「脳みそ抉り取るぞ…とかね」
何処からあの子達はそんなセリフを思い付いたんだ?ってくらい、奏の魔王っぷりも再現された劇。
斎藤くんの口の悪さもちゃんと組み込まれてたし…。
「女ってよく見てるんだな」
「ん?何が…?」
「気付かなかったのか?休み時間を邪魔しに来る女が何人か居ただろ」
それって…腐女子の会に?
今日は斎藤くんが居たことに驚いて、奏の発言に落ち込んで、ひよりちゃんにも驚いて…吉野くんの告白に驚いて。
感情が大パニック起こしてたからちゃんと見れてない。
「あいつらだけは違う目線で見てくるからおかしいと思ってたんだ」
もぐもぐとご飯を掻き込みながら、でも今日で納得がいった。って話す奏。
そしてふと思い出した斎藤くんの言葉。
「あ…え!?そういうこと!?監視してるから気を付けろって!」
「何が?」
「今日、帰り際に言われたんだ。斎藤くんが、気を付けろって」
「斎藤と仲良く話してたんだ?ふーん。口縫い付けていい?」
「よくない!!!」
腐女子の会、怖し。
俺達を選んだのには、やっぱり理由があったんだ…。
それにしても、いくら監視してるからって…あんなに話し方まで網羅するなんて。
観察眼の性能良すぎだろ。
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