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「伊織が斎藤と吉野に好かれる設定なのは気に食わないけどな」
「2人とも好きな人居るのにね」
「ふーん」
食後。ご飯を食べ終えた奏が、俺の分のお皿も洗ってくれていた。
洗い物をしながらそんな会話をしていると、蛇口から流れていた水の音が止まり
無言で奏が俺の隣に座った。
「な、なに……んんっ!?」
神様。仏様。どうかこの魔王の行動パターンを教えてください。
何故僕は男友達にキスされてるのでしょうか…しかも深い方。
後頭部をグッと押さえつけられて、離れる事が出来ない…。
クチュクチュと嫌な音が聞こえるのを必死に我慢してたら、やっと解放してくれた。
それでも、唇がほぼくっついた状態の距離しか離れられてないけども。
「斎藤の好きな人は何処で知った?伊織…そんなにあいつと仲良かったの」
「いや、その…」
しまった。墓穴を掘ってしまった。修学旅行でって言ったら、きっと奏は2人で寝てた時の事…思い出すよね。
うん、実際その場面で知ったんだけども…あの忌々しい土下座の記憶が蘇る。
「伊織は俺だけ見ててよ。何処にも行くな。俺の側に居ろ」
ほんの数センチの距離にある瞳が、俺を見て離さない。
何故か俺も目を離せなくて…
「伊織を誰にも取られたくない。伊織の隣に居ていいのは俺だけだ」
「奏…」
「伊織の全部、知ってるのは俺だけ。俺以外の奴に…伊織を知られたくない」
それが、男でも女でも。
そう言った奏。話す度に吐息が唇にかかって…何故か、嫌な記憶が頭によぎった。
「奏、俺は大丈夫だよ。何処にも行かないから」
背中をゆっくりと撫でて、何度も呪文をかけるように、大丈夫、俺はここに居るから。側に居るよ。
そう言うと、奏は弱々しくコクリと頷いて…俺をギュッと抱きしめた。
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