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「おはよう、奏」
「うん、俺も好きだよ伊織」
「何でそうなった!?」
あれから3日くらい経った。しばらくブルーになっていた奏の調子もようやく戻って、いつもの朝が訪れる。
俺は、忘れるべきだって…無理やり考えないようにしていた事を思い出してしまった。
奏が俺に固執する訳を。
「あ、そういえば見た?昨日のドラマ!」
「見たけど…何が面白いのか分からなかった。恋愛ドラマは恋愛するだけだろ?」
「違うよ…!あそこにモテ要素がギュッと詰まっ痛い痛い痛い痛い…!」
「誰に試す気…?」
いつも通り。いつも通りの奏でいい。俺は奏に心配かけないようにするだけだ。
「すみません!離してください!」
「伊織はこれ以上モテなくていい」
「はい…」
まるで犯罪者が取り押さえられるみたいに、腕をグッと後ろで固定された。
あれ痛いんだね。知らなかった。
過去の事は忘れよう。うん、それが1番だよね。奏も、こうやって俺に固執してていい。
今の奏はこれが通常運転なんだから。
すごい暴力的だけど。
「あ!おはよーございます!」
そういえば…腐女子の会の劇に参加してから、少しだけ日常が変わった。
何か知らないけど、吉野くんと毎朝会う。
「お前なんなの、待ち伏せしてんの」
「え!違いますよ!」
下駄箱で靴を履き替えた後の階段までの廊下に、いつも吉野くんは立っている。
全学年の生徒がそこを通るから、吉野くんが居ても不思議は無いんだけど…
俺達に挨拶した後は自然に輪に入って来て…一緒に階段を上がっていく。
別の階だからすぐに別れるけど、何で急に俺達を待つようになったんだろう。
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