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俺が笑顔で女の子と話せば話すほど…奏様の眉間には皺が増えていってらっしゃる…恐ろしや。
でもごめんよ奏。
奏がどれだけウザくても…俺にとって今は天国そのものなんです。両サイドに可愛い女の子が居て…笑顔で話しかけてくれるんだよ?
女の子が天使に見えてきちゃったぜ…ぶひゃあ。
「顔緩んでるぞ爽やか野郎」
「ふ、普通に笑ってるだけなんだけどなぁ…」
めっちゃ睨みながら言わないで。そんな低い声で言わないで…お箸止まるから。むしろ若干震えるから!
女の子に何を話しかけられても、黙れクソビッチとしか返事しなくなった奏は…そろそろ爆発しそうでヤバいかもしれない。
「ねえ、市川君。今日の放課後…一緒に遊びに行かない?」
「あ…ええと…」
怖い。奏がボソボソ何か言ってる…食堂が騒がしくて何言ってるのか全く聞こえないけど、聞こえなくていい…。
聞いた瞬間おしっこ漏らしちゃうかもしれない。
もうその空間が耐えられなくて…女の子に見られてるから、って行儀よく食べてたスタイルをぶっ壊して、口の中にご飯を一気に放り込んだ。
「ごちそうさまでした…!!ごめんね、今日は劇の練習があるんだ。また今度誘って?ホント、ごめんね」
「う…ううん!いいの、私も急に誘ったし…!げ、劇、頑張ってね!応援してるよ!」
女の子を落とす為に…と思って取っておいた、手をギュッと握りながらの全力で残念がっている顔を披露しておいた。本当は行きたかったけど…っていう気持ちを全力で表す為に編み出した技だ。
めちゃくちゃ顔が赤くなってる。
可愛いなあ…。でもごめん、奏が殺人鬼みたいな目で見てるから。手が震えてるのだけは…ばれたくない。
パッと手を離して、ご飯の乗っていたトレーを片手でもち、今度は奏の手を握った。
「奏、そろそろ帰ろっか」
もちろんご機嫌取りの為だ…。強く握って、奏にこれでもかってくらいの笑顔を向けた。
せっかく朝の機嫌がなおったばかりなのに、ここで機嫌を崩されちゃ意味がない。俺の平穏の為だ…!
と思ったのに
「俺に爽やかスマイルしても意味ないぞ」
って、耳元で囁かれた。
「その割にさ…全然手が離れないんだけど…?」
「好きな奴が手を握ってきてくれたのに、離すバカはいないだろ?」
無愛想な顔が一瞬、口元を緩めた。
男の俺が見ても見惚れる顔だったぞ今のは…!
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