真白学園腐女子の会

26/60
前へ
/480ページ
次へ
「なぁ、奏」 「却下」 「まだ何も言ってない…!」 「どうせ、見に行こうって言うつもりだったんだろ」 当たってますけども。そんな嫌そうに言わなくてもいいじゃないか。吉野くん絡みだから嫌がる気持ちも分かるけどね…! 奏にとっては、俺以外の全ての人間が敵に見えるんだろうし、きっと他はどうでもいいと思ってる。 「でもほら、知り合いがあんな形相で走って行ったら何事かと思うじゃん…?」 「思わない」 とことん突っぱねてくるな…。頑固な奴め…! 「行こうよ奏。あんな吉野くん初めてだし…それに、ほら」 そう、野次馬を見るよう促すと…吉野くんに似た声の子が…あんなに笑顔でいっぱいな明るい子だったはずなのに…物凄く言ってはいけない暴言を吐いてる声が聞こえる。 あと、それと。よく聞き慣れた…人を殴った時に出る、重い音も聞こえる。 「止めなきゃ…!」 「行くな。自分が関係ない喧嘩に首突っ込んでも拗(こじ)れるだけだ」 「それでも、見て見ぬふりはダメだろ!」 もしかしたら、吉野くんが人を殴ってるのかもしれないし、殴られているかもしれない。 どっちにしても…野次馬が出来てるって事は、見てるだけで誰も止めに入ってないってことだ。 俺が昼ごはんを食べる前から、あの人だかりは出来ていたんだから。 「待て伊織!」 俺を止める奏の声も聞かず、俺はその野次馬に向かって走り出した。俺が行ったところで何も出来ないかもしれないけど…喧嘩を止めることくらいは出来る。 「吉野くん…!う、わっ!?」 だから、俺は助けに行こうとしたんだけど。 名前を呼んだ瞬間、人が飛んできた。しかも女の子…に見える、ひよりちゃん。 咄嗟の事で、抱きかかえようとしたのに一緒に転んでしまった。うん、大丈夫。ひよりちゃんは死守したよ、ちゃんと。 お尻が痛い。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1993人が本棚に入れています
本棚に追加