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そうして奏を無理やり帰した。マジで一瞬、奏が強く押してくるから風呂に入れられかけたけど。
ガチャ、と鍵を締めてさっさとお風呂に入る。シャワーで体を流して、少し筋肉が落ちたなぁ…なんて思いながら。
喧嘩ばっかしてた時は、別に鍛えてもないのに筋肉が付いていた。今では割れていた腹筋も、薄っすらと縦筋が付いてるだけだ。
軽く腹を撫でてため息を吐くと、小さくインターホンが鳴る音が聞こえた。
あれ。こんな時間に誰だろう。
急いでシャワーで体を流し、風呂の扉を開けてはーいと返事を返す。
バタバタと慌ただしく、腰にタオルを巻いて玄関を開けると、そこにはギョッと目を丸く開いた吉野くんが居た。
「あれ、吉野くん。どうしたの?何か忘れ物でもした?」
「………………っ」
「吉野…くん?」
「あ、え、いえ!はい!」
「…ん?」
何故かテンパりまくってる吉野くんに、とにかく部屋に入るように促すと、遠慮がちに足を踏み入れた。
少し息切れしてる。走って戻ってきたんだろうか…。
「あの…前田センパイは…」
「もう帰ったよ?」
「あ、そうですか…」
ホッとしたような安堵の表情を浮かべた。どうしたんだろう、なんて思いながらキッチンでお茶を入れて机に置く。
この姿のままは嫌だから…と、濡れた髪と体を拭くために脱衣所へ行こうとすると、パシ…と腕を掴まれた。
「あ、えと。お邪魔してしまいたでしょうか!僕!」
「え、何が…?」
「いえ!あの、事後に見えたので!」
「…………………」
何を言ってるんでしょうかこいつは。バカなのか?どう足掻いても風呂上がりだろーが。
しかも、もしそうだとしても、その質問はデリケート過ぎるだろうがよ、おい。
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