1993人が本棚に入れています
本棚に追加
「お風呂に入ってただけだけど…」
そう答えると、吉野くんは顔を真っ赤にしてすみません!と何度も謝った。
どうしたのこの子。思春期真っ盛りなのか?俺でもそこまで妄想しなかったぞ。
「言っておくけど、奏が俺に片想いしてるだけで、俺達は付き合ってないからね」
事後も何も、親友なんだから。
キスまではしたけど。それって…友達と言えるのか…?
ああ、ダメだ。そこまでは考えないようにしよう。それ以上先の関係になる気はないし。
「それは、僕とひよりちゃんと同じ関係ってことですか…?」
「そうなるね」
「わ!え!すみません!僕、勘違いしてて…!てっきりそういう仲なのかと!」
掴んだ腕を無意識なのか強く握る手が痛い。てかそろそろ離して下さい…!
誤解が解けたならもうこの腕を掴む必要はないでしょうよ!
「あの、吉野くん…手」
「わぁぁぁぁ!?すみません!本当にすみません!」
情緒不安定なのか、吉野くんは。感情が常にハイになってる気がするから、その点では安定感ハンパないけどさ。
やっとの事で離してくれた腕は少し痺れていた。掴む力が強過ぎて血流が…。
「それで、吉野くんは何しに戻ってきたの?」
「あ!忘れてました!ちょっとバタバタして出てきたので、携帯と財布を忘れたんです!」
それなら早く言ってよ。何で事後だとかそんな話をしなくちゃいけなかったのか…。
でも、見渡しても携帯は見つからなくて。机の下かなぁ…って覗き込むと、見慣れない携帯があった。
「あったよ、吉野くん。これでしょ?」
膝を付いて覗き込んだ体制から、そのまま携帯を渡そうと吉野くんを見ると、何か別のところを見てた。
うん、簡潔に言おう。
「何…人のお尻ジロジロ見てるの」
座敷のリビング。テーブルはもちろん低いから、四つん這いになって机を覗き込んだだけなのに。
吉野くんに尻を向ける姿勢になっちゃったけど、男なら何も思わないだろうと思ってたのに…
ポカン…とバカみたいな顔で、吉野くんは俺の尻を見ていた。
ああ、こいつ変態か。
最初のコメントを投稿しよう!