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「センパイは…毎日前田センパイと一緒に居るんですよね?」
「ん?そうだよ…?」
それがどうしたの、って聞こうと思えば…それよりも早く、食い気味に…吉野くんが口を開いた。
「じゃあ…もう、前田センパイとは一線を越えてしまったのでしょうか…!?」
「っ……………!?」
なんて奴だ吉野くん。君はホントに素直すぎて殴りたくなってしまうよバカやろう。
男が好きな人と毎日一緒に過ごしてて、手を出さないわけがない。なんて真剣に言ってるところ悪いけどね…何もしてないからね!?
一線は越えてない。越えてないと言えば嘘になってしまうかもしれないけど…本当に越えてない。キスしただけだ。いや、それ異常だろ…!
男と男でなんて…!
「そ、そんなわけないだろ…?俺も、奏も…おお男なんだから…ね?」
嫌なくらいに冷や汗をかいて、口元が少し震えた。いや、なんだこの分かりやすさは。ありえないだろ、このどもりかた。
机を挟んで座る俺達。それなのに、吉野くんは地に手を付いて…少しずつ俺に近寄ってくる…
来ないでください…!ああもう神様仏様、こんな純粋無垢でおバカな後輩に何故俺は核心を付かれて焦っているのでしょうか…瞳がうるうるしてるのは気のせいでしょうか…!
「センパイ…泣きそうになってます?」
「なってません!」
ついに隣に来てしまった吉野くん。ああ、もうなんだこの子。何で隣に来るんだ。机挟んでてもまあまあ近い距離だったじゃん。それなのに何で…何で…!?
「センパイ…触ってもいいですか?」
「え…嫌だ…」
「少しだけ。お願いします…」
手をゆっくりと上げたかと思うと、吉野くんは俺の目元に溜まった涙を掬い取った。近い…!顔が近い…!
吐息さえもかかる距離に顔を持ってくる必要性はあったのか吉野くん!
奏はいつも突然手を出してくるけど…こうやって、事前に聞かれても困るという事は分かった。それに、どっちにしろ…俺が断ったとしても拒否権なんてないってことも。
「やっぱり泣いてるじゃないですか…」
そう言っていつものように笑う吉野くんから、何故目が離せないのか…誰か教えてはくれませんか…
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