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「俺…やっぱり、奏が好きだ。男同士なのに、って…ずっと思ってたけど。奏が、好き」
「うん。俺も好きだよ…伊織」
ヤバイヤバイ。本当にヤバイ。こんなので大丈夫なんだろうか?
「素敵です!完璧です!萌えをありがとうございます!」
「正直不安なんだけどなぁ…」
「そんな!本当に素敵でしたよ市川様!前田様も…萌えをありがとうございます」
深々と頭を下げる腐女子の会会長、村上さん。そして戸惑う俺に…さり気なく腰に手を当ててくる奏。
おいやめろ。触ってんじゃねーよ。
とうとう本番が明日に迫った。今日は通し稽古…なんだけど。なんともまぁ…悲しいことに、セリフを完全に覚えれてなくて
台本をずっと手放せないまま、稽古を終えてしまったのでございます…。
昨日と今日で、絶対に、自分の全記憶力を持って、完璧に頭に入れようとしてたのに…
何で24時間も眠り続けたんだ俺…!
吉野くんと夜中まで喋ってたまでは覚えてるんだけど…そこからの記憶が無い。
起きたら奏が隣で寝てて…つい朝特有の気だるさというか…不機嫌になる不思議な力で奏を蹴飛ばしていた。
『てめぇ…何様の分際で俺のベッドに寝てんだよ』ってね…。
ホントびっくりした。だんだんと意識が覚醒してきた頃には取り押さえられてたもん。寝技で。
あやうく大切なものを失うところだった。
修学旅行とかさ、気を張って寝ると寝起きは普通なんだけど…やっぱ自分だけの空間だとそうもいかないよね。
そう言い聞かせとく。
「明日はいよいよ本番です!いい劇にいたしましょうね!」
「うん。俺も精一杯頑張るよ」
村上さんにニコリと微笑んで、今晩は徹夜だな…なんて、心の中でため息を吐いた。
セリフ入れなきゃ。斎藤くんも、吉野くんも…セリフが多いけど覚えられたのかな。
奏はもう完璧だし、こんなの俺だけかもしれない。
最初は余裕だと思ってたのに…あの時の余裕は微塵も無い。
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