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そうして、いよいよ物語も終わりに。
「奏…俺、奏が好きだ」
「伊織…っ!」
ギュッと抱きしめられて…それでハッピーエンド。幕が下りるはずだったんだけど。
「俺も好きだよ、伊織」
「んっ!?」
幕が徐々に下りてくるのを横目で確認しながら、見たくない観客席を見ながら、俺は息が止まりそうになっていた。
おかしいおかしい!何でキスされてんの!
こんなの台本にあったっけ?ないよ!あったら断ってるもん!
どんどん濃くなっていくキスに…観客からはおおーっていう声と共にものすごい量のシャッター音が鳴り響いた。
おいおいやめろよ羞恥死させる気かおい!
ちゃっかりふぁんたすてぃっくべいびーも写真撮ってるし!
「か、なで…くるし」
「俺だけ見ろ。見るまで止めない」
無理だよ!こんなに注目されてんのに!どうしろってんだよ!見ろってか!それでも見ろってか!キスに集中しろって言いたいのか!
幕が完全に閉まったっていうのに、それでも止めてくれない奏に視線を移して、俺からも舌を絡めてやった。
これで満足なんだろ!って。
「なに…積極的だな。もっと欲しい?」
それなのに俺の思ってたのと違う展開になったことはもう、うん。正直なところ、薄々こうなるのは分かってた。
ってか、どうしようが止めてくれないのはなんとなくだけど分かってたよ!ちくしょう!ばーか!
「なに、泣いてるの」
「ないてね、ん…やめ」
いつまでも貪ってくる奏を俺から引き離すなんてこと、この敵だらけの空間じゃ誰もしてくれなくて。
腐女子の方々からもこれでもかってくらい写真やムービーに撮られて…俺が奏から解放されたのは、悲しいことに腰が砕けて立てなくなってからだった。
こいつ…キスうまい。
口から溢れて流れ落ちた唾をさいごにペロリと舐め上げた奏は、とても満足そうな顔で
「これで、俺のものだってわかっただろ」
とか、誰に向けて発信してるのか分からない発言をしていた。
俺はもはや返事なんて返す余裕もなくて、そのままへたり込んだところを奏に抱きかかえられて、寮に連れて帰られた。
ホントもう、マジ、死にたい。
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