とても好きな、あの人

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そう思って、俺は喧嘩した。 そりゃあもう容赦なく。ちょっと遊んでやって、その後俺に一生逆らえないくらいのトラウマでも植えてやろうかという勢いで。 案の定、俺の予想通りいじめっ子達は喧嘩が弱かった。 内気な子とか、ちょっと喧嘩したことある奴になら勝てるかな?くらいの強さで。 そんな強さで俺に勝てるわけなんかないんだよ。悪い方の有名人の俺に。 『王子王子言いやがって…舐めんじゃねーよクソガキ。俺は先輩だ。まずは年上を敬うことから始めろ…世間知らずのクソ坊主が』 うん、今思えばとても口の悪いことを言ったなって思うよ。 いくらストレスが溜まってたとはいえ…。爽やかのカケラも無いよね。 本来の俺はこういう口調なんだけど…それも全部直した。 まあでも、この件だけは別。 ストレス溜まってたし、後輩に舐められまくってるし。弱い者専門のいじめっ子だし。 後輩にタメ口で喋られても、からかわれても、いつもなら何も思わないんだけどね…。 むしろ好かれてるのかなくらいのポジティブさを発揮しちゃうんだけどね。 こういう奴に舐められると苛立つっていうか…なんというか。 『伊織、そこまでにしとけば?もうそいつらも懲りただろ』 そんな感情を手足に乗せて一方的な攻撃をしていたら奏に止められて、喧嘩終了。 うん。これで終わるはずだったんだよ、俺の予定では。 情け容赦無いことをいろいろしたから…きっと、もう俺には関わってこないだろう。 そう思ってたんだ。 なのに現在。 「せんぱーい。無視ですかー?一緒に遊びましょうよー」 やたらと絡んでくる。 マジでもう、体のどこかにGPSでも付けられてるんじゃないかと錯覚してしまうくらいに、あちこちに現れる。
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