とても好きな、あの人

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「そう考えたらさ。俺、奥ゆかしいだろ?今回も、何も言わずについて来たし」 「は…?」 奏が突然そんなことを言うもんだから、ここに居る全員が黙ってしまった。 何を言ってんだこいつ。そう思ったのもつかの間で。 「俺にすれば?」 それはもう誰もが悩殺されるくらいの、人前ではめったに見せない俺に向けられた笑顔。 「え…先輩達、そういう関係?」 三郎がそう言ってしまうのも当然の…明らかな告白に固まっていると、周りに居た女の子たちの数人がパシャパシャと写真を撮る音が聞こえた。 腐女子の会…! ホントにどこにでも居るんだな!見張るにしてもあからさますぎるだろおい!って…そうじゃなくて。 「か…奏は本当、冗談が好きだよな…」 引きつった笑顔を浮かべる俺の手を取って、分かってんだろ?なんて、今度は黒い笑顔を向けてくる。 くそ…離したいのに離れない…! 何で突然。そんなの考えなくても分かるけど…。奏は独占欲の塊だから、俺を自分の物だって誇示したいんだ。 俺が目を付けてるから、お前らは手出しすんなって。 「ごちそうさま…です…!」 ああ、そうさ。奏はこんな場所で告白する度胸があるけどさ!俺には無い!全くない!だから逃げました。 減速したら死ぬくらいの勢いで全速力で。 きっと逃げたら余計に疑惑を膨らませることになるんだろうけどさ…!そんなの気にしてちゃダメだ! 奏は俺を言いくるめるのが上手いから、絶対よからぬ方向に話が進んでしまう。 それなら絶対、今逃げて…後で適当にはぐらかすのが1番の解決策だと思う。うんうん。 「あいつ…俺から離れるなって言ったのに。後で仕置きが必要だな…」 今度は顔を歪めて、奏がそう呟いてることなんて知らずに。
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