とても好きな、あの人

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いよいよ眼前に迄迫った魔王は…俺の手をグッと掴んで引き寄せてきた。 「何してんの、伊織」 「いや…えっと…」 だけど、もう片方の手は陸先輩に掴まれてて…全く離れる気配は無い。 どうやって返事しようか考えてる俺なんてもう見えてないのか、奏は陸先輩を見ると…大きな舌打ちをした。 「またあんたか」 「あ、殴った子だ!」 超お気楽な陸先輩だけど…俺には見える。奏がとんでもなく邪悪なものになっていくのが…。 死神的な。 完全に命を刈り取ろうとしてる人にしか見えないよ。目が逝ってますよ奏さん。 「伊織、何でこいつと一緒に居るの。俺から離れて何でこいつと一緒に居るの?」 うわー。2回も同じこと言ったよこの人。覇気が凄い。まじで怖い。 あとさっきから気になってたんだけどさ、奏さん腕を握る力エグいんですけど…ちょっとミシミシ鳴ってるんですけど… 「ちょっとあの、離してくれませんか…あの、いた、痛い、痛い痛い」 「伊織は俺よりあいつがいいの」 「あっ、ちょ、違う。違いますただその腕が何か聞いたことない音鳴らしてるんでマジで痛い、痛い痛い痛い…あっ折れるマジ折れる泣く、もう泣くよ泣いてるけど」 「ったく。後でお仕置き。さっきの分と合わせてお仕置き。逃げんなよ」 超低音ボイスの逃げんなよと共に力を緩めてもらいました。離してはくれないのね…。 両手を掴まれてちゃ涙を拭えないんですが…この流れる涙は誰が拭ってくれるんでしょう。 「奏…涙で何も見えない」 「泣き顔も可愛いから大丈夫」 「え…あ、はい」 離してくれるかと思ったけど、やっぱそこは冷たいんだね…超怒ってるもんね…はぁ。
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