とても好きな、あの人

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そうしてプルプルと震えながら…うん、少し泣きながら、手を引かれて着いたのは奏の部屋だった。 「ここが…調教部屋…です、か…」 「俺がどれほど伊織を好きなのか、体に教え込んであげる」 それは暴力ですか!?暴力ならまだいい!暴力であってくれ…!それなら殴り返しても大丈夫な気がするから! でも、友達としての一線を越えるような事だけは…越えるようなことは…やめてくれぇ… そんな願いも虚しく。 「はい、じゃあ今からお仕置きタイムね」 「おいおい。冗談って言ってくだせぇ奏さんよ。こりゃあ無いぜ!」 「冗談」 「いや、言ってくだせぇとは言いやしたが…止めてくんなきゃ意味無いんですけど!?それは無いでござるよ!」 「話し方統一したら?」 さらりと受け流される俺の言葉の抵抗。手には手錠。鉄特有の音がカチャカチャ鳴ってる。 奏の部屋にある椅子に座らされて、格子状の背もたれに手錠の鎖が引っ掛けられてて。 分かるかな。 後ろでに手錠で椅子に縛られてるの図が伝わるかな!この恐怖が伝わるかな!? というより、数年付き合ってる友達が手錠を所有してるっていう驚きとか言葉じゃ言い表せないんだけど! 「顔がうるさい」 「すみません」 イケメンなのに…顔がうるさいってどういうことだよ…そりゃ、うるさい顔にもなるよ。 だって、この状況…非現実的な世界ではある光景かもしれないけど、まさか自分に降りかかってくるとは思わないでしょうよ。 魔王様とか言ってたけどさ。今までで1番魔王様に見えるよ。悪魔だよ。鬼だよ。畏怖の対象でしかないよ。 だけど、どこかで優しい奏が現れるんじゃないかって希望の感情を持っちゃうじゃん。 いろいろグルグル考えてたら、そりゃあ…百面相しちゃうよ。うんうん。
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