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「伊織は全然分かってない」
「な、何をでしょう…」
「俺がどれだけ伊織の事を好きなのか」
「…俺を拘束するくらい好きなのは、重々承知しておりますよ…?」
両手にお茶を持って、机の上に置いた奏は、そうじゃないと首を振った。
そんなことより。
俺の前にもお茶を置いてくれるのはいいけどさ、拘束されてるから飲めないのですが…?
「伊織は何でそうなの?女ならまだしも…またあの変な男に捕まって。俺を怒らせたいわけ?」
「捕まりたくて捕まったわけじゃ…」
「うるさい」
「すみません」
女の子でも怒るくせに…!何を言ってんだこの魔王様は…。
いや、でも、女の子だったら見えない所を殴られるだけだもんね。男相手だと拘束されるって考えると…
男の方が嫌なのか。そうか。
どっちにしろ行き過ぎた感はありますけども。
「ねえ、どうすれば伊織は俺のモノになるの?俺の気持ちが分かるの?どうすれば…俺だけ見える?」
伊織が他の人間と話してるのを見るだけで気が狂いそうになる。
そう言った奏の顔は、今までに見たことのない怖い顔をしていた。
「伊織は誰とも喋っちゃダメだ。俺としか…俺としか関わっちゃダメ。誰も信用出来ないんだから。俺以外…誰も」
「奏…」
奏はいつもそうだ。俺に何かあると…いつも同じ事を言う。俺を守ろうとする。
「奏。俺はもう大丈夫だよ。どこにも行かないから。あの時、約束しただろ?」
「伊織はそう思ってても、他の奴は伊織に手を出してくる。伊織は俺の気持ちをいつも無視する」
目を潤ませながら、俺の元にゆっくりと近付いてくる奏を見ながら…きっと、今の奏が刃物を持ってたら…正真正銘のヤンデレなんだろうな。
とか、呑気にそんな事を考えてしまう俺はやっぱりおかしいんだろうか。
だって超怖いんだもんこの人!
俺の前に跪いて、少し震えた手を、またゆっくりと…首へ伸ばしてくる。
「伊織…このままじゃ、俺、伊織を…嫉妬で殺してしまいそうだ…」
いや、もしかして。呑気に…考えてる…場合じゃ、ない…感じですか?
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