とても好きな、あの人

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俺も奏の事はよく分かってるつもりだけど、奏の方が1枚上手だから…いつも都合のいいように操られてる気がする。 悔しいぜちくしょう! 隣に椅子を持ってきて座った奏は、俺の肩に両腕をかけた。すっげー近い。 それなのに更に顔を近付けてきて、なんかもうキス出来そうなくらいの距離。 吐息がかかるくらい近くて、これからされる事への恐怖と緊張から…心臓がバクバクとうるさい。 友達とこんなことするなんて。 これは普通の男子高生が通る道じゃないよね!拘束されてるし! だけど、俺の気持ちなんて無視して…奏はぺろりと俺の首筋を舐めた。 それにビクッとして奏を見ると、 「伊織…伊織はさ、俺のどこが嫌い?」 突然そう聞かれた。 「どうしたの急に」 「俺は伊織の事を誰よりも知ってるから、気持ちがこっちに向かないのも分かってる」 「それは…」 「だから、せめて俺のどこが嫌いで好きになれないのか言ってみて」 「嫌いな所なんか無いよ」 嘘つき。そう言った奏。だけど、本当に嫌いな所なんて無い。俺の恋愛対象は女の子だけ。ただそれだけの話。 そりゃ…殴ったり暴言吐いたり殴ったり殴ったり殴ったり殴ったり殴ったりするところは直してほしいけど。 「じゃあ、俺が女だったら?俺と付き合えるのか?」 そう言われて、髪の長い…女装した奏が頭の中によぎった。 「ぶふぉ…っ!」 うん、吹いた。 分かってるよ違う意味だってのは。ただほら、やっぱり友達が女装て…いやぁ、笑っちゃうよ。笑っちゃう。 「伊織」 「あ、はい。すみません」 今は絶対ふざけちゃいけない雰囲気だってのはわかってるよ…分かってるけどさ!やっぱりほら…心の中でふざけないと、この空気ヤバイじゃん。 まぁ、ふざけたら表にも出ちゃうんだけどさ。
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