美しすぎるカップル

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何でこうなったんだろう。どんどん、どんどん奏の思惑にはまっていってる気がするのは俺だけか。俺だけだ。きっと俺だけだ。 「じゃあ、今回の学祭は市川くんと前田くんが主役でいきましょう!」 キャーキャーと盛り上がる女の子に、ヒューヒュー冷やかしてくる男共。 女の子は可愛いけど男には殺意しか湧かねえぜ。 学祭。それは学園祭のこと。文化祭の別名っぽいやつ。それが意味するのはそう、クラスで出し物をすること。 何でまた劇なんだ!!!!! この間、腐女子の方々にやらされたばっかりじゃないかよ!!!しかもまた主役!? 「はい、これ。台本ね」 「あはは…ありがとう…」 最近ちゃんと笑えなくなっている気がするのは俺だけかな…。 『シンデレラ』と書かれた表紙の文字が歪んで見える…泣きそう。シンデレラって。シンデレラって!!! 王子が俺ならまだしも、俺がシンデレラって!!!おかしい。これは誰の策略だ?聞かなくても分かる。 「てめえ畜生この野郎…何で俺がシンデレラなんだよふざけんな」 「爽やかはどうした?」 「だから小声で喋ってんだろーが」 意識しなくても出てしまうドスの効いた声で奏をギロリと睨んだら、超笑顔で返事をされた。 普段は滅多に笑わないくせに、こういう時だけ微笑みかけてくる奏が憎い…。 「似合うんじゃないか?伊織のドレス姿」 「似合うワケねーだろ。男だぞ体格は完璧な男だぞそれなりに筋肉もあるしドレスなんてただの女装にしかならねえわスネ毛生えてるし腕毛もボーボーだわ」 「剃ればいいじゃん」 「誰が剃るか!」 何でこうなった? 満場一致で俺達が主役になったのも、男が冷やかして喜んでいるのも、全部…全部。あの腐女子の劇のせいである。 お似合いだかなんだか…断っても拒否権なんてなくて。 俺か奏が王子をすれば盛り上がるんじゃないかって話になった瞬間 「俺が王子なら、伊織がシンデレラで良いんじゃないの?」 とか最悪な発言をした奏の言葉で、あ!それいいな!みたいな雰囲気になった。 憎い…憎いぜ畜生…!
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