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「なに。今回は助けてくれないの」
そんなやり取りを隣で見ていたひよりちゃんから、心が痛くなるお言葉を頂きました。
ですよねぇ…これじゃあ俺たちも野次馬と変わらないっていうか…用無しですよねぇ…。
「人に頼ってないで、自分で動いたらどうだ」
「こんなか弱い女の子に戦えって言うの?」
「男だろ。男なら好きな女くらい自分で守ってみせろ」
とうとう奏さんの矛先がひよりちゃんへと向いた。無理に決まってるじゃん…この間も太郎に吹き飛ばされてた子だよ?
ひよりちゃんより大きい吉野君で手も足も出ないのに、こんな小さい子が立ち向かえるわけが…
「喧嘩しないって、美羽と約束したから」
そう思っていたら、ひよりちゃんが口を開いた。
喧嘩しない約束…?
「これは喧嘩じゃない。守る戦いだろ。人に守ってもらって、それで胸張って好きって言えるのかよ」
なんだなんだ。いつもは魔王な発言しかしない奏が、どこぞの青春漫画みたいなこと言ってるぞ…
ひよりちゃんの影に隠れてる美羽ちゃんは、とんでもなく気まずそうな顔をしている。
「怪我…してほしく、ないから…喧嘩は…だめ」
おおおーっと!ここでかわいいかわいい美羽ちゃんの天使のような声が…!声も可愛いとか無敵だよこの子。しかも優しい!
でも気づいて美羽ちゃん!吉野君は怪我してるよ!
「えっと…吉野君は?」
ダメだぁ!聞いちゃった!ごめん!でも気になったら聞きたくなる性分なんだ!責めてるわけじゃないの。許して。
美羽ちゃんの顔を見ると、涙目になっていた。
「え、ごめん!」
咄嗟に謝ったその時。ひよりちゃんから鳩尾を殴られた。痛いぞ…これはなかなかに痛いぞ…さすが男だひよりちゃん。君はやっぱり女の子じゃない…。
そこだけは褒めるけど…魔王様が降臨した。
「女の子を泣かせた俺が悪いんだ!静まり給え!魔王様!静まり給え!」
「キスしてくれたら良いよ」
「しない!でも今日の晩御飯は奏の望むものを作りましょう!」
「じゃあ伊織が食べたい」
「人肉以外でおねしゃす!!!」
お分かりいただけただろうか。全力で奏を止める俺の図が。
そしてこの間、吉野君は殴られ続けている。
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