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この展開には、吉野くんも驚いたようで…殴ろうとしていたファイティングポーズのまま、口を開いて固まっていた。
「え、なになに。実は喧嘩強い系?」
慌てて太郎に駆け寄る次郎とは別に、喧嘩バカの三郎がニヤニヤするのを俺がなだめるという謎の結末を迎えた。
ひよりちゃんがピーだってこと、いつから知ってたんだよ奏は。知ってたなら教えてくれれば良かったのに。
「ピー。久しぶりだね」
「前から言おうと思ってたけどよ、伊織さ…猫のかぶり方ドギツイよな」
「な、何のことか分からないなぁ…」
「前はきったねぇ日本語しか使わねえし、恐ろしい程のバカだったくせに」
「おかしいな。何も聞こえないや」
都合の悪いことは聞かないに限る。特にピーのしつこさは身をもって体験したからな…俺の中では元祖喧嘩バカだ。
普通は負けたらそれで終わるのに、ピーは本当にしつこかった…それで仲良くなるわけでもなく、本当に、喧嘩だけする奴だったのに。
「ピーが喧嘩を止めるほど好きな人が出来るなんて…信じられないな」
「俺はニコニコ微笑みながら話す伊織の考えが理解できねぇけどな」
「さあ、ピー。久しぶりの再会もここまでにして…美羽ちゃんとデート行っておいでよ。両想いだったんだし」
「都合が悪くなると逃げる所は相変わらずだな」
昔を知ってる奴がいるってのは厄介だ…!野次馬だらけのこの場所で何か言われたら…と思うと冷や汗が流れてくる。
しかもピーは俺と仲良くない。むしろ敵。
「いいから早く行けよぶっ殺すぞチビ…」
というわけで。耳元で小さく囁いてピーの背中を少し押した。末永くお幸せに、と一言添えて。
もう校内で会っても絡まない。まだモテ人生は続けたいんだよ…!彼女出来てないし!!!魔王退治もしなくちゃならないのに、ピーまで加わるとか無理だから!
「なんだよ。つまんねーの。じゃ、俺は行くわ。吉野の事は頼んだ。失恋の傷でも癒してやってよ」
そうして、ひよりちゃんことピーと、病んだ美羽ちゃんカップルは帰っていった。
未だに固まる吉野くんを置いて。
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