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そんな感じで、吉野くんは三郎に任せて俺達は寮へ帰った。帰りたかった。帰ると思っていた。
「先輩どこ行くの」
振り返れば…そこには吉野くんを担いでしかめっ面をしている三郎が俺を睨んでいました。全力で。
人間担いでる奴初めて見た…!
それ知ってる?俵担ぎっていうんだよ!これ、俺の少ない豆知識!あとね、それで担がれると腹部が圧迫されて呼吸が苦しくなるんだよ!
という現実逃避をしたところで。
「こいつ話しかけても無視するから、先に飯食わせてよ」
「オーマイガー」
昼飯3回のつもりが晩飯も三郎の中ではカウントされてたんだね!これ以上食費が増えるのは正直きついでござるよ…?
しかもそのノリだと吉野くんまで付いてくるよね?
そうか。日常生活から役作りは始まってるんだな!?俺に過酷な労働を強制して、シンデレラになりきれって…そういうことなんだろ!?
分かったよ。やってやるよ。
「もっと家事頑張るから!だから、だから…!私も…お義姉様達と一緒に舞踏会に参加させて下さい」
セリフ全然覚えてないけど、それっぽいセリフを言ってみたらすっげえ場がシラケた。そりゃそーですよねー。
これ武士なら切腹ものの不祥事おこしちゃった感ある空気だよ。
「美しい姫。どうか、僕と結婚してください」
だけど魔王は天才だ。このノリに瞬時に気付いて、間のストーリー全部ぶっ飛ばしてクライマックスに持っていくんだから。
「だが断る!!!」
こんなプロポーズ…うかつに返事したらそのままお持ち帰りされちゃうのは分かっている。
フハハハハハハ!俺がそんな罠にやすやすとハマると思うなよ大魔王め!吾輩は貴様の手口などお見通しなのだ!!!
「腕もぎ取られるのと、俺と結婚するのどっちがお望みですか?」
「うわぁ…出たな殺戮マシーン!今日こそはお前を倒して平和を取り戻す!!!」
「本気でヤるぞ?」
「っさーせんっしたー!!」
ガシッとガチな顔で腕を掴まれたので全力で謝った。
でも分かってるんだ…。この場で一番可哀想なのは、こんな茶番(ただし俺は本気)を見せられてる三郎だよね。
「よ、よし!晩ご飯の材料を買いにスーパーへ行こう!」
「俺と結婚すんのか、しないのか…どっちなんだよ」
(奏もわりと本気だった最悪の事案が発生)
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