美しすぎるカップル

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「なあ、返事くらいしろよ」 無視。 ってか、こいつに聞こえてんのかどうかも怪しくなってきた。目開けながら寝てんじゃねえの。 「起きろ。寝てんじゃねえよ」 思いっきり揺さぶってみた。でも起きない。軽くビンタしてみた。起きない。 まばたきをした。起きてる。 「…起きてんのかよ」 人を慰めるって、どうすればいいんだ。友達を…友達が慰めていたのは見た事がある。何を言ってたっけ。 …興味なかったから聞いてなかった。失敗した。ちゃんと聞いておけば良かった。 「お前の気持ちは分かんねえ。かけてやれる言葉も見つからない。悪いな」 だから友達がやってたように、吉野を抱きしめて頭を撫でた。どのくらいの強さで抱きしめてたんだろう。こういうのは強い方がいいのか…? 撫でるのは、優しい方がいいよな。 「何か喋れよ。俺にはお前が何を思ってんのか分からない。でも、元気になってもらわないと困る」 そのまま黙った。もう本当に何を言ったらいいのか分からない。先輩のご飯は諦めるか。 そう思った時、肩が濡れてる感じがした。 「……っ」 声にならない声も聞こえた。 なんだ、泣いてんのか。人形みたいに動かないよりはマシだな。 人を慰めるには、抱きしめた方が良いのか。これから先永遠に役に立たなさそうな知識だなこれ。 「失恋って、そんなに悲しいのか」 「………うるさい」 聞いたら怒られた。 でも、そう言いながら…俺の腰に手を回してくる。 なんだよ…こいつ男のくせにハッキリしない野郎だな。恋愛ってのがそんなにも悲しいならしなけりゃ良いのに。 「失恋したのが…悲しいんじゃない」 「は?」 突然話し出した吉野。じゃあ何で泣いてんだよ。ひよりちゃんひよりちゃんって、虫みたいに回りにいたくせに。 もう側に居られなくなるのが辛いんじゃないの。 「ずっと側にいたのに…何も知らなかった…教えてももらえなかった…恋人にはなれなくても。それでも友達くらいに思って…もらえてるかな、って…。全部…俺の勘違いだった」 「……」 「側にいたのは、俺だけ…だった。ひよりちゃんは、遠くにいたのに。俺は分かって…なかった…」 そう言って。今度は圧し殺すことなくガキみたいに泣き始めた吉野に、ますます掛けてやる言葉が分からなくなった。 吉野が強く抱きしめてきて肩を濡らすから。
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