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「俺の友達が、失恋した時…しばらく落ち込んでたけど、別の奴見つけて、付き合って、元気になった」
多分。
本当はよく知らない。気が付いたら女がいて、今まで通り普通に遊んでた…気がする。
「なにそれ…慰めてんのか?」
鼻をすすりながら言う吉野に、こんなんじゃ慰めにもならないかと聞いたら、らしくないと返された。
そりゃそうだろう。会えば喧嘩ばっかしてたのに、今はこうやって抱きしめてる。おかしな話だ。
「早く元気になれよ。じゃないと先輩の飯が食えなくなる」
「お前…良い奴かと思ったのに。結局飯かよ」
「悪かったな良い奴じゃなくて」
それでも、ここまでやってやったんだ。少しは褒めてくれてもいいと思うけど。
まあ、褒められたところで吉野とはもう話すことも無いだろうし、別にいいけどな。
「お前、喧嘩は弱いけど強い奴だと思ってたのに…やっぱり弱いよな。男のくせに失恋くらいでメソメソ泣くな」
「るせ…」
毎回ボコられるのに立ち向かってくる度胸だけは好きだった。俺も、そういうのが好きだから。
何回も喧嘩して、勝てた時の幸福感を味わうことだけが俺の趣味でもある。
そんな話をすると
「それでお前だけ殴って来なかったのか…ほんと、バカだよな。喧嘩なんか止めろよ…バカ野郎」
と、弱々しい声で罵られた。
「仕方ないだろ。他に楽しいもんが見つからないんだから」
喧嘩以上に楽しい事があるから、俺だって喧嘩なんか止めてるっての。バレた時の代償は報復とか、停学とか。そういうので自分に返ってくるのは普通にだるい。
喧嘩相手も停学になるから、その間に仲良くなって友達が増えるってのはメリットかもしれないけど。
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