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先生は朝のホームルームを簡単に済ませると、機嫌よく出ていった。
いつも通り、斎藤くんは爆睡低燃費モード。
いつもお昼前まで空席になっているのに、朝から隣に斎藤くんがいる事に少し違和感。
これで毎朝起こしに行かなくて良くなるなら…俺も万々歳だ。
毎朝怒鳴られるのも疲れるってもんだよ。
なんて、だんだん引いていくブリザードを背に思っていた。
そして1限目の始まりを告げるチャイムが鳴る。すると斎藤くんはムクリと起き上がり…カバンを机の横にかけた。
ま、枕(カバン)を机の片付けた…だと!?
斎藤くん=枕。くらいの勢いで斎藤くんは睡眠を大事にする寝太郎くらいに思ってたのに!
少しだるそうに背にもたれ、扉を見つめた。
やばいぞ。斎藤くんが起きるだけじゃなくて先生を待ち望んでおる…!授業の始まりを待ち望んでおる…!!
「伊織。そろそろ視界消すよ?」
「おおふ…背後に暗殺者がいたことを忘れていたでござるなぁ…」
「忘れてた?俺を?」
「いえ、嘘です覚えています何なら一番重要な記憶でございますすみません…だからあの…凶器を突き付けるのはおやめになって…」
チクチクと刺さるシャー芯。
さっき教科書をぶち殺したシャーペンを持つ殺人鬼が背後に居るってのに…何故斎藤くんを凝視したんだ俺ぇ!
地味にめっちゃ痛い。
「次見たら頸動脈切るよ」
そう言って静かに即死確定宣言をされた俺は、斎藤くんを視界から消した。
いつになったら勝てるんだろう。
普通さぁ!惚れてる方が負けるんじゃないの!?なんで惚れてない方が負けてんの!?惚れたら負けって言葉に何も納得出来ないんだけど!
「皆さんお久しぶりです。今日は家庭科の先生が体調不良でお休みなので、代わりに私が授業をしますね」
俺が命の危機に晒されている時。
穏やかな声と共に入ってきたのは保健室の古川先生だった。
おいおい斎藤くぅん!君は従順なペットかい!?ペットなのかい!?いつも授業なんか受けないくせに!
可愛いとこあるじゃないか!
これだよ!俺の思う惚れたら負けはこれだよ!!隙あらば苦痛か恐怖かその両方を与えてくるのは違うよね!!
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