シンデレラは眠らない

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「たすけて奏…斉藤くんに素で喋っちゃった…」 「もうバラせば?」 「やだよ!」 「じゃあ殴っとけ。記憶くらいなら飛ぶだろ」 「暴力的解決はちょっと…」 奏に聞いた俺が馬鹿だった。 まあ、ほら、人の噂も七十五日って言うし…全然関係ない諺(ことわざ)だけど…あの、うん。 時間に解決してもらおう。それしかないよね…! 斉藤くんめちゃくちゃジロジロ見てくるけど…大丈夫、大丈夫。 話し掛けられても爽やかで返して、さっきの事を話し始めた時は無視し続けてみた。 斉藤くんも特に俺には興味が無いのか、古川先生の授業だからか…それ以上は突っ込んでこなかった。 良かったぁ…これはセーフだよね! 先生の授業が終わってからも斉藤くんはどこかへ行っちゃって、それ以上追求を受けることは無かった。 午後には帰ってきたけど、いつも通りカバンを抱きしめながら寝てるし。 グッジョブ俺! 一時限目からどうなるかと思ったけど…それ以外は通常運転。俺の爽やか生活は守られたのだった。 「伊織、行くぞ」 「うん」 そして放課後。 早いことに文化祭はもうすぐだ。今日は衣装係さんが作ってくれた衣装を試着する。 そう、シンデレラのドレスをだ。 ちょっとテンションの高い奏さんは俺の女装姿を見れることに浮かれているのか…笑う準備でもしてるのか…。 視聴覚室に向かうと、けっこうな人数がいた。 他にも劇をするクラスがあって、今日は全員がここで試着する。俺達は男2人のシンデレラだっていうのに…他のクラスはライオンキングとかいるよ。 やっぱ体育会系の男はいい筋肉してるよな…それっぽいもじゃもじゃのマント的なの羽織ってるだけなのに野性味が出て最高に似合ってる。 …何で俺はドレスなんだ。
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