シンデレラは眠らない

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俺が終わりのない苦行に耐えながら晩御飯の準備をしていた頃。 橘と吉野くんが仲良くやって来た。 「あの、昨日に引き続き…今日もすみません」 「大丈夫だよ、もうすぐ出来るから待っててね」 申し訳なさそうに入ってきた吉野くんに、堂々と座る橘。家主のように振る舞う奏。 吉野くんだけだよ、普通はこういう態度だよねって…再確認させてくれるのは。 キッチンまでやって来た吉野くんは、紙袋を渡してきた。 「あの、昨日と…今日のお礼です」 中を見ると、何やら美味しそうなゼリーが…! 今の俺にとって物凄く貴重な食材が入っていた。 感激し過ぎてうるうるし始める瞳にストップをかけて、何回もありがとうと伝えた。言いすぎて引かれるくらい。 「食後に皆で食べようか」 「いえ!お礼に持ってきたものなので…先輩が食べてください!」 「いいじゃん。もう俺の物なら、俺が一緒に食べたいって思う人と食べたいし」 「…先輩」 今度は吉野くんが感激してる。 どうだ俺の優しさ全開トークは!! 女の子だけじゃなく、男もメロメロだぁ!恋愛的な意味じゃないよ?こうやって好感度を上げれば…その噂が噂を呼び、女の子からの好感度がもっと上がる! そう、こうやって俺は2年を過ごしてきた。 「これで男体盛でもしようか」 「あっ…すみません大丈夫です普通に食べましょう普通に」 俺が邪な考えを持ってると、何で魔王は必ずやって来るんだ。俺の考えってそんなに単純なのか? 清々しいほどの笑顔で話しかけられたら、本気で怖いからやめて欲しい。 あとちょっと顔が近いのも怖い。 「近いよ…鼻息かかってますよ奏様…」 「今晩楽しみにしてるよ」 デットエンド。 今日の俺絶対デットエンド。 本当に死ぬかもれしない。 どうしたんですか的な顔でこっちを見る吉野くんが輝いて見えるくらいに目の前の魔王はどす黒いオーラを出してた。笑顔で。
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