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「あ、も…もう出来たみたい!ほら!あの、食べ…食べよう!」
自分でも驚きの日本語力低下。
魔王の体を押して椅子まで誘導し、座らせた。
料理が完成しただけで命って救われるんだね、夜の乗り越え方は全く思い付かないけど…あはは。
とりあえず、一難を乗り越え…次の一難は後で考えることにしよう。
「包み焼き…ですか?」
「そうだよ。火傷しないように食べてね」
とんでもなく目を輝かせる吉野くんを見てると、こっちまで笑顔になる。
皆のホイルの真ん中にナイフで切込みを入れて割ってあげると、俺の力作が顔を出す。
鮭のバターホイル焼き!!
却下されたバターソテーを意地でも詰め込んだ。面倒事を増やしてまで実現してやったこの執念。
普通に美味そうすぎる…流石俺!
「いただきます!」
「…どう?」
「………」
吉野くん…一口食べたあと、俺を見て瞳をうるうるさせてる。それは美味しすぎてなのか、不味すぎてなのかどっち?
せめて何か喋ってくれ。
「上手い」
「はい!とても!!」
橘が淡々と呟くと、やっと吉野くんも口を開いた。
俺の力作が失敗したのかと思って焦っちゃったじゃん…奏はいつも通り何も話さず黙々と食べてるし。
無言でばくばく食べる時は美味しいって意味だから良いけど。
「褒められると嬉しいよ。ありがとう」
たまにはリアクションのある人と食べるのも良いね。
奏があまり好きじゃないものとか作ると、無言でゆっくり食べるからちょっと怖いもん。
あれこそ無言の圧力…もうこんなもの作るなよ的な。
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