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いい感じにホクホクした体と共にテレビ。
「横、来い」
なのに…いつも通り座椅子に座ると、奏の隣に呼ばれた。
真剣な話する時と怒られる時しか呼ばれない魔の巣窟に…何故、今?
何かしたっけ…って考えても何も思い浮かばない。浮かぶのは俺の腹だけ。悲しい。
「早く」
「…はい」
俺の大好きなバラエティ番組がやってるのに、何も笑えない。
恐怖のまま隣に座ると、暖かくて気持ちいい風が。
「どうしたの今日…」
「何が」
「凄い献身的じゃない?」
テレビの音なんて聞こえない。
あの奏さんが…俺のためにドライヤーまでしてくれてるよ皆ぁ…!!
おかしい…そんなこと今まで一度もされた事ないし、した事もないのに。
というか自然乾燥派の俺はドライヤーなんて滅多に使わない。ドライヤーがこの家にある事すら微妙な記憶だったのに。
「何か…して欲しい事でもあるの?」
「付き合って」
「それ以外でお願いします…」
奏の気分なのかな。
いや、気分でこんなことするかな?
だって人にドライヤーするなんて、めちゃくちゃ面倒なはずなのに…。
「ほら、終わり」
短髪だからすぐに乾いた髪。
背中を押されて、俺はいつもの定位置に戻った。
奏は何を求めるでもなく、今度は自分の髪をドライヤーし始めた。
人にドライヤーしてもらうなんて子供ぶりだったけど…なかなかに気持ちいい。俺がロン毛だったら寝ちゃってたかもしれない。
「明日もするから」
「あ、はい…」
奏もすぐに終わって、洗面所までドライヤーを片しに行った。
てか…普通に返事しちゃったけど、明日も一緒に風呂入るってこと!?
いや、何もしないから良いんだけどさ!
俺だけ戦闘態勢になっちゃうの恥ずかしいからやめていただきたい!あとまたこのお腹見られるのも恥ずかしい!
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