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分かればいい。と、やっとのことで睨むのを止めてくれた奏は、無言で朝ごはんを食べ終え
皿洗いを済ませると、俺の首根っこを持って部屋を出ました。
やったよ母ちゃん…これが子猫の気分ってやつだね…悲しい。
「鍵を寄越せ」
徒歩数秒。ポケットから出した斎藤くんの合鍵を無理やり俺の手から奪い取ると、やっと手を離してくれました。
突然すぎて尻餅ついたよ。
外では爽やかでいたいんだから…こういう扱いは止めてほしい。
「絶対入って来るなよ。一歩でも足を踏み入れてみろ。お前に明日は来ないと思え」
「拙者の命を狩り取る気でござるか…!」
「返事」
「かしこまりました…」
一言で言おう!切実なデレ不足!
何か悲しくなってきたから、このテンションやめようと思います。
ソワソワしながらも、奏が入ってから物音1つ聞こえない廊下で待つこと5分程。
まだ出てきません。
おかしいなぁ…もしかして、また喧嘩でもしてるのかな?
それはマズイ。
学年主席の奏が暴力沙汰を起こすなんて…!中学の時はしょっちゅうだったけど!
でも、それにしては無音すぎるよな。
もっとドタバタした音が聞こえてもおかしくないはずだし。
……………………。
って考えてる間に、軽く10分は越えてるんですけど…。
え、まさかマジで喧嘩してる?
明日という恋人とのオサラバ覚悟で踏み込んでみるか…?
いや、落ち着け。俺の読みはだいたい外れる。何回こうやって失敗をしたことか。
17年も生きてるんだ。いくら俺でもそろそろ学習する。
もう皆が登校し始める時間だ。廊下にボーッと立つ俺は、部屋から出てきた先輩後輩に爽やかスマイルを向けながら考えた。
やっぱり喧嘩してんじゃね!?
ガチで心配になってきたんだけど…!
ええい!仕方ない!サラバだ明日!会えない事を悲しまないでくれ!
俺は死地に赴くことにするぜ!
とか、心の中ではカッコ良く決めてみたものの、やっぱり怖いからドアはゆっくり開けちゃう。
俺って小心者………。
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