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「俺、爽やかになる!」
「急に何?」
「だから、俺…爽やかになろうと思うんだよ。どうせ高校に行くなら、モテ人生がいいだろ?」
「は?」
で、俺は相談してみたワケだ。
中学に入ってすぐに意気投合して、仲良くなった前田 奏(まえだ かなで)に。
黒いサラサラヘアで、髪型は爽やかっぽいが…目力あるし、性格も全然爽やかじゃなくて、キレると手が付けられないタイプ。
要するに、爽やかとは真逆。
奏は俺と一緒にヤンチャしてる友達で、喧嘩もけっこう強い。
そして、頭も良い。
勉強してないはずなのに…。
「奏の志望校ってどこだっけ?」
「特に決めてない。伊織は?」
「決まってんだろ!可愛い女の子がいるとこだよ!」
ああ、そう。と興味無さげに返事をする奏の手を取って、しっかりと目を合わせて微笑んだ。
「真白学園。奏、俺を真白学園に連れてって下さい!」
「………………」
真白学園は、この辺の高校に比べると、そんなに入るのは難しくない。
俺からすると超難関だけど。
外へ遊びに出掛けた時、真白学園の制服を着た女の子を偶然見つけたんだ。
………息が止まるかと思った。
「真白学園の女の子、顔の偏差値すげー高くない?あそこなら、俺の運命の相手も見つかると思うんだよ!」
「運命の相手って…大袈裟だな」
呆れた目で見てくる奏に、俺はお願いします!ともう一度頭を下げた。
真白学園は、ここからはかなり遠い高校だけど…希望者は寮に住めるって聞いた。
どうせ、見た目をこの金髪から爽やかっぽく暗い色に変えたとしても
地元に帰ると関係ない。
ここでは、不良の市川 伊織としてのイメージがもう付いてるんだから。
それなら、地元に帰らずに寮に住んで…楽しんで暮らしたいって思うだろ?
「誰も俺を知らない土地で、爽やかとして生まれ変わるんだよ!」
「ふーん…」
この時、もうすぐ中学3年になろうかという季節だった。
受験シーズンを控えた俺は、この時…可愛い子を落とすことばかり考えていたんだ。
「本当に、真白学園に行くのか?」
「当たり前だろ!女の子の為なら嫌いな勉強だって頑張る!」
この、奏の問い掛けの本当の意味にも気付かずに…
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