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俺の頭を軽く小突いて、奏はソファに座った。足を組んで、背もたれに肘を掛けて。
めっちゃ睨んでくるですけど…
「座れよ」
「はい…」
家主がどっちか分からない。
斎藤くんの部屋には、あまり家具が無かったけど…俺の部屋はけっこう充実してる。
ベッドに、2人掛けソファに、テーブル。ソファの向かいには座椅子。
あ、ソファっていっても座椅子みたいなソファだよ。ソファベッドって言うのかな。
ゴロゴロしたかったから、大きいのを買ったんだ。
今はほとんど奏の定位置になってるけどね…何で俺が座椅子側なんだろうか。
奏に言われた通り、いつもの座椅子へ正座した。
怖過ぎて奏の顔が全く見れない。
「伊織」
「はい…」
名前を呼ばれて少しだけ顔を上げると、奏が隣をポンポンと叩く。
「隣」
一言。たった一言なのに、その言葉がとてつもなく怖いのは何故でしょう。
それって考えるまでもなく隣に座れって事ですよね!?普通に嫌なんですけど!
「怖いので拒否してもいいですか」
意を決して言ってみたさ。だって殴られるかもしれないし、とてつもない暴言を吐かれるかもしれないんだよ!?
誰だって嫌だよね!
なのに、奏は顔色を変えることなく…また、口を開いた。
「隣」
「……………」
うそやん。
大魔王、奏様はかなりお怒りらしい。
そんなに斎藤くんとの甘々な朝を邪魔されたのが気に食わなかったのか…!
仕方ない。
大事な時間を奪ったのは俺だ。
もう何も言わずに従おう。
ゆっくりと立ち上がる俺の体が少し震えているなんて、そんなの幻覚だ。錯覚だ。思い込みだ。
怖くない、怖くない、怖くない。
ああ、なんで2人掛けソファってこんなに小さいんだろう。
奏との密着度がえげつないよ。
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