ふゆやすみ

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待ち合わせ時間までほんの数時間しかないことに気付き、早々に家を後にして市内まで出た。 寮にいる時は、用事がある時しか行かなかったから、こうやってフラフラと向かうのは久しぶりだ。 「可愛い子いっぱいだなあ…」 やっぱ気合い入れて外出してる子多いから、可愛い子が目立つね。ちらほらと、何人か同じ高校の制服も見える。 やっぱ学校終わったら遊ぶよね。 何回見ても、レベルの高い可愛い子達が揃ってる。なんであんなに可愛い子達を前にして、いつも魔王と対峙せねばならんのだ。 魔王から解放されたこの僅かな時間、話すだけでもいい。美人とイチャイチャしたい。 「ちょっと待って。俺今、金髪だよな…?」 果たしてこの姿を同じ高校の子に見られても平気なのか…?あの爽やかなイメージは保てるのか? 市川くん金髪になってて怖かったぁ…みたいな噂とか流れたらどうしよう。それはちょっとヤバい気がする。 しかも考え付かなかったけど、地元の奴らもここに遊びに来ることは当然有り得るし、そうなれば俺の元不良説まで流れるかもしれない…。 「何でこんなにもあんぽんたんなんだ俺!」 帰る。帰るぞ。今の幸せよりもあと一年ある学生生活で爽やかに美しい女の子を引っ掛けたい。付き合いたい。 交通費だけが無駄になった。最悪だ。高校生にはこの数百円の距離も往復となれば大金になるのに。くそ。 「って…あれ」 ちょっと拗ね始めてたけど…人混みの奥に、ひときわ輝く人物を見つけた。芸能人かと見紛う程のイケメン。しかも知り合い。 薄茶色の髪をなびかせて、颯爽と歩くイケメンは拓海だった。 遠くからこっちに歩いて来てるのを見て、もし暇ならこのまま遊ぼうと声を掛け…ようとしたら、突然現れたスーツ姿の男に手を引かれ車に乗って去っていった。 「今の…って、」 手を引かれたのも、無理やりに見えた。拓海も驚いた顔をしてたし…。 呆然とする俺が次に見たのは、ポチさんの姿。 少し離れた場所で歩いていたのか、拓海が車に乗せられたのを見て凄い剣幕で追いかけていった。
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