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この会社は、高校生が入ってきても何の違和感もないくらい出入りが激しいらしい。
拓海を連れ込むにあたって相手方にも有利なんだろうが、まさかタイミング良く伊織が見てたとは思わなかったんだろうな。
それに裕翔が拓海の携帯に仕込んだGPSがあるから、最短で見つけ出すことが出来た。
「すみません、少しだけボールペンをお借りできますか?」
途中、少しでも武器になるものをとフロアの中心にある受付でボールペンを借りた。
ずっとソワソワしている伊織を見て、今にも飛び込んでいきそうだけど…ちゃんと我慢してるのが偉い。
「1人はだめ…」
そう小さく呟いたのをみて、思わず伊織の頭を撫でた。今回はちゃんと頼ってくれて嬉しい。
大事なとこではいつも、伊織は1人で行動するから。
「いいか伊織。見つけた奴は全員殴るんだぞ。敵味方考えてる暇はないから」
「うん」
あのおっさんの反応を見る限り、ひと目で分かる光景が広がってたはずだ。殴られてたか、殴ってるか。もしかするともっと酷い光景かもしれない。
奥の扉へ近づきながら、裕翔に場所の連絡をして扉を開けた。
「あの馬鹿…っ!」
開けてすぐ。さっきまで褒めてた自分はどうかしてたんじゃないかと後悔した。
ポチ…とかなんとか言っていたが、そいつが無双状態で殴りまくってるのを見て、伊織もすぐさま参戦し始めたから。
殴り合いのようでいて片方は立派な武器を持っているし、あんなものを見ても怯むどころか走って立ち向かって行ったのは…縛られた拓海を見たからだろうか。
「まぬけ」
目が合った拓海にそう言うと、自分でもそう思っていたのか、呆れたようにふっと笑った。
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