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邪魔な奴らを殴りつつ。椅子に座った状態で縛られている拓海の元へ行くと、少し殴られたのか口元から血が出ていた。
「何で分かったの…?」
「偶然、伊織がお前を見たんだよ」
「…そう」
きつく巻かれたロープを解きながら、何でこんな事になったのか聞けば、こっちが聞きたいと笑われた。
俺は伊織を巻き込みたくなんかなかったのに。振り返れば、必死に戦う伊織が目に入る。
「お前なんかのために伊織が怪我するのはムカつくんだよ。自分の身くらい自分で守れ」
「自分でも呆気なく攫われた自覚はあるんだけどね…悪かったよ」
悪かったと言いながらも笑顔を崩さないところを見ると、喜んでるんだろう。こいつは究極のかまってちゃんだから。
だからきっと、捨てられたと思ってあの時伊織を追い詰めるような事をしたんだ。伊織に深い傷を残すなんて、考えもせずに。
むしろ考えた上で行動したのかもしれない。
「あの時のこと…伊織から事情は聞いた。それでも俺はお前のこと、許したわけじゃないから」
「奏は伊織ラブだもんね。俺にも献身的な友達が欲しいよ」
「いるだろ愛犬が。目先にとらわれて目の前を見落とすな。それに友達との距離は、仲が良くてせいぜい身を削って金貸す程度だ。命に関わることはしないんだよ覚えとけ」
「じゃあ伊織は俺のこと好きなのかな。こんな所まで来てくれたんだし」
「…調子乗んなよ」
「怖い怖い。冗談だよ。伊織が人一倍優しいのは知ってる。奏もツンツンしてるけど優しいよね」
血が出てても、これだけ軽口が叩けるなら問題ないだろう。笑ってるし。
拓海を解放して、特に問題はなかったから気にしなかったけど、そろそろ伊織を助けに行こうと駆け寄った。
もうほとんど終わってるけど。
「伊織、帰るぞ」
「拓海はっ…!?なんだ。無事か」
「なんだなんて酷い言い様だけど、助けに来てくれてありがとう伊織」
「当たり前だろ!約束したし、友達なんだから」
命懸けで助けに来てくれたんだね、なんて笑いながら俺を見る拓海を睨みながら、さっきの言葉を撤回したい気持ちで更にイライラした。
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