ふゆやすみ

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伊織と出会って、あまり行かなかった学校にも次第に通うようになった。行ったからといって、新しい友達が増えるわけてもなかったけど、伊織の友達とは連むようになった。 ほとんど喧嘩ばかりだったけど。 今では落ち着いたものの、あの時の伊織は本当に手が付けられなかった。すぐキレるし、すぐ殴るし。普段は良い奴なのに、少し厄介な奴だなと認識する程に。 仲間に何かすることはなかったし、勢いで喧嘩した後はそいつらとも友達になって、どんどん顔が広がっていった。 その場に俺がいることも多くて、伊織だけじゃなく、裕翔達もそうとう暴れまくってたからか、あまり何もしてない俺まで無駄に顔を覚えられてた。 顔が広くなるということは、あいつらにも話が行くわけで。ある日、1人で帰っていたその日。 殴られても、骨を折られても何も変わっていないと思ったらしい奴らに、囲まれた。俺はたった1人だったのに、相手は10人で、しかもバットなんかも持ってて。 最悪だと思いながら抵抗するも、ザコと呼ぶには実力がありすぎて。いつも通り殴られてた。 慣れていた事だったし、またかと思うだけで、そこに諦めはあっても恐怖心は無く。ただひたすら時間が過ぎるのを待つだけだった。 いつ殴り飽きるだろう。今日は何本折られるんだろう。どうやって帰ろうか。 その考えが表情に出てたようで。いつもより執拗だった。それでも、まあ仕方ないかと諦めて耐えていた時、攻撃が止まった。 『大丈夫か…っ!?って、血塗れじゃん!やばい救急車!うわ携帯忘れた!』 今思い返しても呑気なセリフだと思う。 最初にしてた俺探しゲームは、当時もたまに暇つぶしでやってたらしく。その過程で俺は見つけられた。 その時は、安堵感よりも…伊織まで傷付くことが恐ろしくて。咄嗟に逃げるよう言ったのに、伊織は逃げるどころか立ち向かって行った。
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