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でも、それだけ良い威勢で話してても、不利な状況は変わらず。
狙いは俺なのに、伊織は俺を守るように覆いかぶさって来たもんだから、全ての攻撃は伊織が受けた。
伊織を剥がそうとしても、それだけは絶対に譲らず。ただ守られるしかない自分が悔しかった。
『どけ伊織!』
『や、だね…!』
結局、俺達はボコボコにされた。伊織を引き剥がしてからは、俺も殴られたけど…特に伊織は瀕死の状態で。
体を引きずりながら、そこから離れて救急車を呼んだのを思い出す。
『俺のせいだ。ごめんな、伊織』
二人して入院しても、俺の方が先に退院した。俺のせいだと毎日落ち込んで…毎日見舞いに向かった。
思えば、誰かに謝ったのはこれが初めてかもしれない。眠る伊織を見ると、もう目覚めないんじゃないかと恐ろしくなって…その場から離れられなかった。
『奏、ちゃんと寝てんのか?俺は平気だって毎日言ってんだろ!あと1週間もすれば退院出来るし』
『俺のせいで…ごめん』
『謝んな。しおらしい奏は新鮮で良いけど。もうフルマラソン出来るくらいには元気だっての!』
伊織はいつも明るくて。俺のために大怪我までしたのに、何でそんな風に振る舞えるのか不思議だった。
普通なら、俺と離れてもいいのに。死んでてもおかしくない傷を負って、平然としていられる伊織が理解出来なかった。
だけど、その気持ちを理解出来るようになったのは、拓海のことがあってからだ。
伊織が怯えてる姿を初めて見たあの日。
別に、死んでも構わないと思った。伊織が無事なら。怯える伊織を守れるなら。
その時に、既に友達以上の気持ちを抱いていたことを知った。
伊織に助けられて、助けて。お互い支えあっていくうちに…伊織には抱いちゃいけない感情を持ってしまった。
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