ふゆやすみ

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高校に入って、女子相手に猫をかぶる馬鹿な行動をし始めて…俺は気に食わないけど、伊織が幸せならそれでいいと思ってた。 見ててイラつくのは仕方ないから、わりと頻繁に暴力は振るってたけど。 伊織を大切に思ってくれる彼女がいるなら、俺は友達として、それを見守る覚悟は出来ていた。それが世間の普通だから。 男は男に恋愛感情なんか抱いちゃいけない。言っても…伊織を困らせるだけなのは分かってた。男をそんな風に見れるほど、視野の広い人間ではないことも。 だから俺の気持ちは伝えないと…そう思ってたのに。男同士に偏見がないのを見て、思わず伝えてしまった。 その時は、俺の気持ちだけでも知っていてほしい。俺は伊織が好きなんだと、振り向いてくれなくても良いと思ってたのに。 その欲は日に日に大きくなっていった。 こんな、あまりにも自分勝手な行動ばかりしてる俺でも…伊織は側にいてくれる。 お互いの過去から、お互いに寄り添っているだけかもしれない。それでも良かった。 伊織が吹っ切って、俺の側に居なくても。生きているだけでいい。 なのに…伊織が、俺の前で倒れた。 俺を庇って、大量の血を流して…遺言みたいに、ありがとうという言葉を残して。 伊織がいなくなるかもしれない。そんなの嫌だ。俺は、俺の生きる意味は、伊織しかいないのに。 伊織がいなくなったら、また空っぽになる。生きている意味なんて無いのに。 伊織だけいれば良かった世界で、その唯一の人がいなくなるなら…俺も、一緒に行きたい。 俺の人生に初めて色がついた。それを走馬灯のように振り返れば…俺も死ねるかな。伊織と一緒に。
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