1993人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
_____________________
「奏、美味しい?」
「伊織が作ったってだけで、美味しく感じる」
「あ、ありがと…」
お昼。俺の作ったお弁当を黙々と食べる奏は、いつもとは違う返事を返してきた。
普段は普通、とか、まあまあ、とか、いつも通り、とか…絶対褒めてくれなかったのに。
褒めてほしいとは思ってたけど、褒められるとむず痒い。
しかも今回は、ほぼ真顔の奏が笑顔で言いましたよ。サラッと恥ずかしいことを。
「照れてる伊織…可愛い」
「……………」
ああ、ダメだ。いつもと違いすぎて特製卵焼き落としちゃったよ、もったいない…。
ご飯を食べ始めてから数分、奏がペロリとご飯を食べ終えた頃に、いつも通り女の子達がやって来る。
奏に猛烈アピールしに来る女の子と、俺目当てで来る子。
校舎も離れてるのに…どんなスピードでご飯食べてるんだろう。
なんて、けっこう頻繁に思う。
そして1人、奏に軽くボディタッチをしながら…ちょっと化粧の濃い女の子が話し掛けた。
すごい勇気だ。
「うるさい。黙って」
それに対しての奏の態度も揺るぎない。てか、ほんの少し当たりがキツイ気もする。
ちょっと乱暴に手を振りほどいてるし。
それを呆然と見ながらご飯を食べ終えた俺を見ると、奏は俺の手を取って立ち上がった。
「早く行くぞ」
「え、あっ。ごめん、また今度一緒に喋ろうね」
強引な奏に驚きつつ…悲しそうにこっちを見てくる女の子に謝って、教室を後にする。
「斎藤を探すんだろ。ちんたら歩くな」
やっぱり奏は斎藤くん絡みになると不機嫌だ…。
正直言うと、斎藤くんより女の子と話す時間の方が俺には大事なんだけどなぁ…
だめだめ。斎藤くんをちゃんと更生させないとね。
最初のコメントを投稿しよう!