ふゆやすみ

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「あんなに最低な事をしたのに、皆は許してくれて…感謝してる。本当は、初めて会いに行った日も、謝りに行ったんだ。逆に苦しめちゃったけど」 「そんなこと…。気づかなかったとはいえ、俺が拓海を傷付けたことに変わりないよ」 「前も、今回みたいに助けに来てくれたんだよね。伊織の性格は知ってたのに。本当に、ごめん」 何でこんな…突然。拓海と仲直り出来たんだろうか。それは本当に嬉しいんだけど、 奏は目を閉じたままで、全く動かない。いつも見てた姿と一緒で、ただ眠ってるみたいだ。そう言われても、信じられるような、綺麗な顔。 「また、友達に戻ってくれるかな」 「ずっと友達だよ。俺達は」 拓海は嬉しそうに笑って、俺の隣へ来た。 奏の手を握る俺の手に、被せるように手を乗せて。拓海の手は、奏と違って温かい。それだけで現実を突き付けられてる気分だ。 「伊織、ありがとう。俺はちょっと席を外すけど、伊織は奏の側にいてあげて。目が覚めた時、一番に映るのは伊織が良いはずだから」 「それ、どういう…」 返事を聞くことも無く、拓海は病室から出ていった。 大部屋の病室に、いるのは俺達2人だけ。静かで、寂しい。ふと気付くと、奏の手が温かくなってきてる気がする。 それに、さっきは動揺してて気づかなかったけど…息、してる? 「…っ、さむい」 「え、奏…?」 喋った。しかも寝返りした。 モゾモゾと動きながら、奏は布団の中から袋を見つけて、イライラしながらそれをベットサイドに捨てた。 見ると、氷の入った袋。 寝ぼけているのか、奏は唸りながらそれを何個も取り出しては捨て始めた。 なになに。どうなってんの。
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