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「あと、伊織が頑張るのは自分と向き合う事だと思うから。俺の方は主犯も分かったし、適当に潰しておくよ」
だから気にしないでと言う拓海に、適当に潰すのイメージが、どう頑張っても殺戮系しか思い浮かばない。
そんな俺を察したのか、大ボリュームのため息を聞かされて、目で訴える馬鹿なのを発動された。
「法には触れないよ。多分」
「多分て…」
「とにかく。奏と仲良くするんだよ。大事なんでしょ、奏のこと。俺達とは違う意味で。自覚してるくせに、気付かないフリはもうダメだよ?」
「なんのこと…」
「奏がいないと生きていけないくらい、愛してるんじゃないの?」
「あい…っ、!?」
何でそんな恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく言えるんだ…これが先輩か。これが大人の力か…!!
俺には好きが精一杯だ。
好きが精一杯だけど、それを奏に思ったことは…いや、友達としてならあるけど。まあ、心の拠り所としては奏が一番だと思う。
そんな、恋愛の関係って…!まあ、キスはしちゃってるけど。しかも嫌じゃないとも思ってたよ?でも、だからって恋愛には…。
「伊織は押しに弱いから、押されたら抵抗せずに受け入れた方が早いよ。時間の無駄じゃん」
「無駄って…」
本当に、ひどい言い様だな。奏の件以外なら、そりゃあ…俺だって抵抗するのやめるよ?でもさ、そんな簡単に諦めちゃっても良いものなのか?
相手は男…どころか魔王だぞ?
なんて抵抗は虚しく。離れていたとはいえ、単純な俺の考えくらいは読めるのか、何度目か分からないため息と一緒に隣へ座られた。
立ち上がって、ベットに座る俺の隣へ来た拓海は、そのまま軽やかな手付きで俺の腰に片手を回した。
「なんなら、俺と試す?」
「な、なにを…」
「恋愛」
何言ってんだこいつ…て、顔をしたところで、奏達がいたのを思い出した。ボコボコの顔した裕翔と、裕翔に哀れみの視線を向ける翔と一緒に。
その顔を見ても、申し訳なさの欠片も出てこないような事をしたから、逆にざまあみろ…くらいしか感情が出てこない。
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