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「そこまでだ。調子に乗るな」
こんな有り得ない提案をされたところで、俺と拓海は遮られた。しかも、後ろから無理やり…抱きしめられて、引きずられて。今座ってたのと逆側のベットサイドまで。
せめて間に入り込むとかしてほしいのに。手を回されたのは腹だけど、衝撃で地味に肩が痛い。
「奏は冷淡なのに、伊織には執拗だよね。ネチネチ絡みついてる感じ?」
「お前は突発的に馬鹿な事をするから油断出来ないんだよ」
「それは言えてるかも。じゃなきゃ、裕翔のこと刺さないもんね」
あははと笑って言う話じゃないと思うけど…拓海が楽しそうなら、もういいや。あんなに苦しんだ事件を、笑い話にする日が来るとは思わなかったけど。
しかも加害者も被害者もいる空間で。
「俺、拓海といたら刺されるし、ボコられるしで良いことなくない?ちょっとくらい手加減してくれても良くない!?」
元被害者の意見は無視するとして。今考えれば、確かにここに遺体を置くわけないんだけど…信じちゃったから裕翔が悪い。
ボコボコに腫らした顔は、その代償だと思ってくれればいいと思う。
ブチ切れたからとはいえ、現役の裕翔にここまで攻撃出来るとは思わなかったな。ちょっとくらいは抵抗するかと思ったのに。
「じゃ、そろそろ面会時間終わるから帰るね。明日も来るよ。そこの馬鹿と一緒に」
「うん、ありがとう…拓海」
「俺と付き合う件も、考えておいてね」
そんな冗談を笑いながら、拓海達は帰っていった。フラフラの裕翔を支える翔の背中が不幸オーラで溢れすぎて、何か…申し訳ない。
裕翔に何が起きても、尻拭いは翔の仕事になるから、ちょっと可哀想だけど…今回も諦めてもらおう。
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