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「一応、その…無事で良かったです」
「伊織も。次は無茶しないで」
「はい…ご心配お掛けしました…」
奏は明日、念の為の精密検査をして…結果が問題なければ退院するらしい。対して俺は、傷がある程度くっつくまで。
暴れ回ったせいで、冬休み前半は入院生活で終わりそうだ。ちょっと辛い。
何が一番辛いって、退院予定日がクリスマスイブだってことだよ…!デートの予定を立てることも出来ないなんて…可哀想な俺。
しかも完治までの時間を考えると、冬休みは完全に潰れる。辛すぎる。存分に遊べない。
まあ、デートする相手なんか、いないんだけど。
立てたところで、魔王にどんな仕打ちをされるか分からない。傷口グリグリされて、痛いからまだ遊べないねとかも有り得る。怖い。
「ねえ、まお…奏」
「今、魔王って言った?」
「言ってません。静まりたまえ…」
「傷口グリグリする?」
「そういうところだよ!君が魔王たる所以はそこなんだよお!?」
俺の考えは合ってた。合ってたけど、違う。もっと優しい友達が欲しい…。
奏は魔王だし、裕翔はバカだし、翔は冷たいし、拓海は辛辣だし…俺の周りに優しさだけを兼ね備えたパーフェクトフレンドはいないのか?
「俺はけっこう優しいと思うけど」
「読心術やめて…」
そんなにわかりやすいかな俺。こんなんじゃ、女の子を口説く時も、下心丸見えになってんじゃないの?
だから彼女出来ないのかな…男ばっかに言い寄られるのかな…下心丸出しの男に惚れる男ってのも、どうかと思うけど。
そしてそれの先駆者が目の前に。
「奏、俺のことどれくらい好き?」
なんて、ちょっと重めの彼女が聞くような事、言ってしまう俺の頭はおかしくなっちゃったんだろうか。
それを聞いた奏も、ちょっと驚いた顔をして…その後、ふっと笑うと、俺のベットに座ってきた。
脇に腰掛けるだけだけど、何か、近い。
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