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奏に手を引かれるまま、廊下をテクテク歩いていく。
何も喋らない奏。
斎藤くんの居場所を知ってるのかな?なんて思って無言で着いて行くと、辿り着いたのは保健室。
「いいか。入って来るなよ」
「うん…」
何かこれが恒例になりそうな気がするんですけど。
奏の言うことに学校ではあまり反抗しないようにしてる俺は、大人しく待つことにした。
ほら、誰が俺達の会話を聞いてるか分かんないじゃん?気を抜くとすぐ爽やかじゃなくなっちゃうし。
ガラガラ、と保健室の引き戸を開けた向こう側に、一瞬斎藤くんの姿が見えた。
白衣を着た先生も。
先生が居るなら、喧嘩も…やらしい事も無いだろうと安心して、壁に背を預けて立つ。
「お。市川!いいところに居た!」
ちょうど扉がしまって数秒後。
俺を見つけて超笑顔で手を振って来るのは担任の松川先生だ。
俺に斎藤くんを押し付けた張本人である。
「今いけるか?ちょっと手伝ってほしい事があるんだよ」
「いいですよ、何ですか?」
内心、超めんどくせえ。とか思ってるけど。爽やか委員長はこういうのを苦とも思わない。
って、言い聞かせる。
「すまんが、職員室まで着いてきてくれないか?すぐ終わるから」
校舎の1階、保健室の並びに職員室がある。距離はほんの数mだ。
松川先生がすぐ終わるって言ってるし…奏もそんな早く出てこないだろうと、何も伝えずに先生に着いて行くことにした。
ま、俺が見当たらないってなったら、携帯にでもかけて来るだろ。
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