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自然に程よく整えられた髪。鼻筋も通っていて、唇も薄すぎず厚すぎず。
目元を見るだけで、イケメンって分かっちゃうくらい完璧な目。
ボタンが2つ開けられたシャツからは、何か色気が出てるし…
だらしなく結ばれた赤いネクタイは3年生の学年カラーだ。
「あの、先輩…」
「ん?どうしたの?」
ニコニコ笑う先輩の物腰は柔らかい。何か、フワフワしてる。
ちょっと強引だけど。
腰に回された手は、離してはくれなさそうだ。てか、全然取れないし…!
「俺、本当に行かなきゃいけない所があるので…そろそろ」
そろそろ離して下さい。って…言いたかったのに…。
また、遮られた。
肩にもたれ掛かってきた先輩。いや、これはギュッて抱きしめられたって言い方の方が合ってるかもしれない。
「あぁぁ…もう、ダメ」
「え、先輩!?」
俺を抱き締めた先輩の体から、そのままの体勢からダラダラと力が抜けていく。
それを受け止める為に、咄嗟に俺も先輩の腰に手を回して支えたけど…これ、どういうこと!?
「体調悪いんですか?」
「立ってるのが辛い…」
何言ってんのこの人?と、思ったけど、深く聞く前にはもうスヤスヤ眠ってて。
耳元で寝息が聞こえた。
「先輩…?」
嘘だろ。この人ほぼ立ったまま寝ちゃったんですけど!
よくそんな体勢で寝れるな!
てか、俺このままどうすればいいの!?多分…次はここの授業のはずだから、置いて行っても良さそうだけど…。
取り敢えず、片手で先輩を支えたまま、ポケットから携帯を取り出して電話をかけた。
相手はもちろん奏だ。
1コールも経たずにすぐに電話に出た奏に、何か物凄い罵声を浴びせられた。
放送禁止用語を連発しまくってくるから、俺も凄まじい勢いで謝っておいたけど。
『……伊織?』
「そうでございます…」
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