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ああ、やっちまった…とか思っているであろう伊織の頭を撫で、ありがとう、と笑顔でお礼を言っておいた。
「え、うん…どういたしまして…」
俺が素直に礼を言う事なんがまず少ないし、伊織は少し照れたように返事を返してくれた。
ほんと、可愛い奴。
「すげぇな市川!お前超強い!」
ま、佐々木に関しては、特にフォローを入れることも無いだろう。こいつバカだしな。
すげーすげーと目を輝かしているあたり、遊びか何かと間違えていると思うし。
問題は斉藤か。
この辺ではかなり喧嘩が強かったと、風の噂で聞いた。
そんな奴が、たかがクラスメイトで…しかも喧嘩なんかしそうにない優等生キャラの伊織に1発パンチを喰らわされただけでダウンするなんて
本人も、思いもしなかっただろう。
手加減したとはいえ、俺の蹴りを頭に喰らっても痛いの一言で終わっていたほど、打たれ強いみたいだしな。
「お前…何かしてたのか?」
「え、何かって…?」
斉藤の言葉に苦い笑いを浮かべながら返す伊織。
俺的には、別に元は不良だったとバレても構わないんだけどな。
そうなれば、伊織に近付くウザい女共が寄って来なくなるかもしれないし、クラスメイトの男も、怖がって寄り付かないかもしれないし。
でも、伊織がそうなって落ち込むのは嫌だし…仕方ないか。
「伊織は小学校のときに空手をやってたんだよ。こんな細いナリでも、力はある方だ」
簡単にやられるなんて、所詮お前はただ目つきが悪くて噛み癖のある可愛い不良止まりってことだな。
って、座っている斉藤を見下しながら言うと、何故かまた喧嘩になった。
ホント、こいつは簡単に突っかかって来るな。
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