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「市川早くしろよー。ジェンガが進まないだろー?」
超急かしてくる佐々木くんに、黙って俺を見てくる斎藤くん。
そして、
「伊織」
って目を閉じてキス待ちしてる奏。
何で俺が悪いみたいな雰囲気になってるんですか!
ジェンガしたいって思ってるの佐々木くんだけだろ!
斎藤くんは絶対面白がってるし、奏は俺とキスしたいだけだろ?なぁ。正直に言えよ!
なんて思ってても…口に出来ない爽やかキャラを今まで何回呪ったんだろう。
「すぅー…はぁー…」
深呼吸をして、遂に俺は腹をくくった。
こういうのは、焦らせば焦らす程皆の記憶に残るもんだ。
だったら、さっさと済ましてサラッと終わらせるのが1番!
「奏、絶対目開けないでね」
「分かったから早く」
くそ…まさかこの俺が…男に自分からキスする日が来るなんて…!
ドキドキと脈打つ心臓に、何で緊張してんだよ。って突っ込みを入れつつ
奏の肩に手を乗せて…顔をゆっくりと近付けていった。
「ん…」
なんだか懐かしく感じる奏の唇の感覚を全力で吹っ飛ばし、女の子とキスしてるんだって思い込んだ。
でも、薄っすらと瞼を開くと…そこに居るのは当然、奏で。
「お熱いねお2人さん!」
佐々木くんの言葉と共に聞こえたカシャ、という効果音で…俺は素早く唇を離した。
写真撮りやがったな佐々木このやろう。後でスマホ踏んづけてぶっ壊してやる。
ものすごく満足そうな奏は、満面の笑みで元の位置へと帰って行った。
これは自分史上最悪の黒歴史として俺の記憶に残る出来事になるだろう。
死にたい。
「じゃあ次は俺ー!」
そんな俺の気持ちも知らずに、佐々木はひょい、と次のジェンガを抜き取った。
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