修学旅行

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そう思った自分を呪うことになるのは、その僅か数分後だった。 「奏…奏…登ってるよ」 「登ってるな」 「これって落ちる予兆だよな?」 「落ちるアトラクションだからな」 「怖い」 「見てりゃ伝わる」 「助けて」 「安全バー外せばいい?」 「それ死ぬやつ」 ガタガタと音を立てて登るボート。 もはや両サイドで暴れる恐竜なんて全く目に付かないくらいに…俺の体は武者震いを始めていた。 うん、恐怖で。 「何でこれ乗るのもっとちゃんと止めてくれなかったの…!?」 「怖がる伊織も可愛いよ」 「答えになってない!」 いつもは見せない優しい笑みを見せる奏は、本当に大魔王様だと思う。 俺の怖がる姿を見て喜ぶなんて…あんたろくな大人になんないからな! 泣きそう…。 頂上まで上り詰め…すぐに落ちるのかと思ったら、水平な道を進み出した。 なにこれ…なにこれなにこれ! 「そうか。このいつ落ちるか分からない時間を与えて…俺たちを弄んでるんだな!?」 「伊織、落ち着いて。もうすぐ落ちるよ」 「なにそれ落ち着いていられない」 うう…と唸り声を上げながら、前に付いてある手すりにしがみ付く俺。 もはや正気なんて保っていられない…。 「あ、ティラノサウルス」 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」 奏の声に続いて、本当に俺が出したとは思えないくらいの奇声を上げて… 俺たちの乗るボートは急降下した。 「ヤバイ内蔵浮く!出る!」 「出たら拾ってあげる」 そうして…始めてのジュラシックパークは幕を閉じた。 最前列というスーパーびしょ濡れポイントに座ってたおかげで 泣いてるのが奏にバレなかったことだけが本当に…不幸中の幸いでした。 「奏…次は優しい乗り物乗ろ?」 「ハリウッドドリームとか?」 「それジェットコースター!」 奏様は…ガクガク震える俺を見て爆笑するほど、ご機嫌さんです。
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