修学旅行

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「なぁ、奏」 「ん?もう青のり付いてないよ」 「その件は忘れて下さい」 この爽やか君が、トイレに弾丸で走って鏡をチェックしたなんて、思い出したくもない。 奏はそういうとこデリカシーないよね! 「て、そうじゃなくて!奏は行きたいとこないの?俺ばっか満足したって仕方ないじゃん」 USJの時も、絶叫マシンばっか乗りたいって言うから、奏の好きな乗り物には乗れてないし… 俺は超楽しいけど、やっぱちょっと気を使っちゃうよね。 「だから言ったじゃん。伊織の好きなところに行こって」 伊織が笑ってる顔が見れれば、それで満足だ。なんてキザなことを言う奏に ヘタレな俺は何も言えなかった。 なんか…たまーに忘れちゃうけど、奏って俺のこと好きなんだよな。 それも、友情の意味じゃなくて。 これが奏なりの口説き方か… 「よし、その口説き文句もらった!」 「何言ってんの伊織。それ、誰に言うつもりなの?口裂くよ」 「ごめんなさい」 冗談のつもりだったのに…奏はおっかない。怖い。魔王。 「そういえばさぁ…奏って、いつから俺のこと好きだったの?」 「俺が袋叩きにされて、死にそうになってた時」 何の躊躇いもなく言うんだな。 しかもそれって、恋に落ちる瞬間とは言えないんじゃないかな。 少し前…中学の時。 超喧嘩しまくってた時、俺と奏はそりゃあもう負け無しの強さだった。 だからめちゃくちゃ恨まれてたし、大人数でいきなり襲いかかってくるなんて、日常茶飯事のこと。 いつもはヤバイって思ったら逃げてたんだけど… 奏が1人の時、襲撃にあった。 『市川さん!前田さんが…!』 仲間が知らせに来てくれて、奏を助けに行った。 その時は俺もボッコボコにされたけど…奏を守って、盾になって、何とか逃げ切って。 奏は腕の骨が折れる重傷だったから、そのまま病院直行… 「え、ちょっと待って。それのどこに惚れる要素が?」 「何で分かんないの?」 いや、分かる方がおかしくない?
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