飼い主の虎太郎くん。

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「で、あるからして……」 いつもの授業、いつもの光景。 先生のくだらない授業を真面目に聞き、黒板に書かれたことをそのまま書き写す。 自分の中ではかなり昔にやり終えた内容が授業でされる。 これほどつまらない事は無い。 それでも、他にやることもないので…いつも真面目に出席している。 こんなただのクソ真面目な生徒は、よく居るだろう。 提出期限もしっかり守り、先生からの信頼が厚い奴は。 こんな日常が嫌で、つまらなくて、脱出したいと思いながら…俺はずっと抜け出せずにいる。 親が厳しいわけでもない。 俺が、自分の意思でつまらない日常を選んでいるのだ。 考えることすら、面倒だから。 ただ、毎日、ほんの少しだけ…日常から逸脱する瞬間がある。 プルルルル… 「吉田か。出ていいぞ」 「はい。すみません」 それは、電話がかかって来た時。 同じクラスの皆も、受け持ちの先生も、全員がこの事に何も言わない。 俺だけが…授業中に電話が鳴っても咎められないのだ。 それもそうだ。 暴走したあいつを止められるのは、俺しか居ないのだから。 「はい、吉田です」 適当に相槌を打ちながら、机の上に広げてある教科書とノートを片付け、カバンにしまった。 電話口から伝えられた場所へと向かう為の準備。 「はい、すぐに向かいます」 そう返事をして電話を切ると、先生に頭を下げて教室を出た。 今回は、家庭科準備室。 呼び出されているけれど、急ぐことはなく…普通のスピードで歩いて向かった。
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