1993人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
「あ、吉田!先生から電話来たか?」
「はい。家庭科準備室ですよね」
「悪いな、いつも」
「いえ、気にしてません」
廊下を歩き、先生とすれ違う度に同じような受け答え。
もはや先生もあいつを止める気は無いのか、全て俺に丸投げだ。
別にいいけど。
この間、俺は授業に出席したことにしていてくれているし、俺としてはつまらない授業から抜け出せるというメリットがある。
だからって嬉しいワケでもないけれど。
そして歩くこと数分、家庭科準備室に着き、ノックすることなくガラガラと引き戸を開けた。
「あーもう。ほら、焦らすから来ちゃったじゃない」
「そ、そんな…ごめん、なさい」
明らかに行為中。
そんなことを気にもせず、俺は無言で2人の隣まで行き…腰を下ろした。
「帰るぞ」
「やだよー。まだ何も楽しんでないもん。どっちも出してないし」
そんなことは分かってる。
今から入れるところだったことくらい、見れば分かる。
「じゃあ早く終わらせて」
今は近くに先生も居ないし。と、準備室にある椅子へ座った。
今持ってるのは携帯だけ。
いじる気分でもないし、窓からボーッと景色を見始めた。
もちろん、BGMは喘ぎ声。
いつもなら無理矢理にでも連れて行くんだけど…正直、こいつが何をしようと俺には関係無い。
高木 陸(たかぎ りく)
こいつは先生から要注意人物として知られていて、テストは万年最下位の問題児。
俺のクラスメイト。
俺達の関係は、それ以上でも以下でもない。
ただ話すだけ。遊ぶこともなく、名前を知っているだけの間柄。
陸は所構わず…廊下でも、教室でも、グラウンドでも…気に入った相手を襲う癖がある。
理性、という文字が無いのだ。
最初のコメントを投稿しよう!