飼い主の虎太郎くん。

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「あ、吉田!先生から電話来たか?」 「はい。家庭科準備室ですよね」 「悪いな、いつも」 「いえ、気にしてません」 廊下を歩き、先生とすれ違う度に同じような受け答え。 もはや先生もあいつを止める気は無いのか、全て俺に丸投げだ。 別にいいけど。 この間、俺は授業に出席したことにしていてくれているし、俺としてはつまらない授業から抜け出せるというメリットがある。 だからって嬉しいワケでもないけれど。 そして歩くこと数分、家庭科準備室に着き、ノックすることなくガラガラと引き戸を開けた。 「あーもう。ほら、焦らすから来ちゃったじゃない」 「そ、そんな…ごめん、なさい」 明らかに行為中。 そんなことを気にもせず、俺は無言で2人の隣まで行き…腰を下ろした。 「帰るぞ」 「やだよー。まだ何も楽しんでないもん。どっちも出してないし」 そんなことは分かってる。 今から入れるところだったことくらい、見れば分かる。 「じゃあ早く終わらせて」 今は近くに先生も居ないし。と、準備室にある椅子へ座った。 今持ってるのは携帯だけ。 いじる気分でもないし、窓からボーッと景色を見始めた。 もちろん、BGMは喘ぎ声。 いつもなら無理矢理にでも連れて行くんだけど…正直、こいつが何をしようと俺には関係無い。 高木 陸(たかぎ りく) こいつは先生から要注意人物として知られていて、テストは万年最下位の問題児。 俺のクラスメイト。 俺達の関係は、それ以上でも以下でもない。 ただ話すだけ。遊ぶこともなく、名前を知っているだけの間柄。 陸は所構わず…廊下でも、教室でも、グラウンドでも…気に入った相手を襲う癖がある。 理性、という文字が無いのだ。
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