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寮へ着くまでに眠ってしまった陸をベッドへ寝かし、俺はリビングへ。
今は昼休みの時間帯。
午後の授業は全てHRだった気がする。もうすぐ文化祭の時期だから。
文化祭や体育祭って行事の必要性を感じない俺は、そういう授業は全て出ていない。
誰かが話している内容を聞いて、自分のクラスがするものを知り
当日になって、自分がする役割を知るっていうのが、ここ2年間の俺の文化祭。
どうせ出る予定の無かった授業だ。授業を抜け出す理由を考える手間が省けた。
キッチンでコーヒーを入れて、パソコンを立ち上げる。
いつもお世話になっている大学の教授に…レポートを提出して欲しいと言われた。
真白学園大学部に進学することはもう決まっていて、高校の授業が暇だと話したら
何故か教授に笑われて…レポートを出して来いと言われた。
『吉田 虎太郎の、人の愛し方』
何故こんな議題に取り組まなくてはいけないのか。
自分には縁もゆかりも無いものだと断っても、自分なりの考え方でいいから書けと…拒否権無しで。
人の愛し方。人を愛したことの無い俺は…このレポートに何も書けないまま、もう1週間が経とうとしている。
誰にでも愛を振りまいている陸を見ていても、何も共感出来るものは無いし
普遍的な恋愛感情を調べて見ても…俺には何も理解できなかった。
友達から恋愛へ、一目惚れ、嫌いだった人間が好きに…意味が分からない。
そこが分からなければ…人の愛し方なんて漠然とした議題まで辿り着けない。
一文字もパソコンに打ち込むことなく…ただ、題名に打ち込んだ議題を凝視して
毎回、このレポートに取り掛かる時間は終えてしまう。
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